城下町の文化に端を発し、長い間、地元の神社や祭り、商店街といった地域の生活に支えられてきた染物屋は、時代の変遷とともに希少な存在となっています。現在、染物業界は関西方面に多く、東北以北において伝統染色を手掛ける染物屋は数少なく、武田染工場においても、地元仙台はもとより、東北一円および全国からの問い合わせや、ご注文を頂戴しております。 弊社では、昔ながらの「硫化染め」「注染」の染色法を通じて、生活の中で受け継がれる染め製品としての手ぬぐいや、帆前掛け、祭り袢纏など、東北における伝統染色を担う企業としての誇りと使命を、次代へ継承していきたいと願っています。また、全国のネットワークを駆使し、時代のニーズに応える製品を、皆様にお届けしてまいります。 |
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武田染工場では「注染(ちゅうせん)」(本染めとも言われます)という染め方を用いて、手ぬぐいを染めています。「注染」は、生地に〈型〉(※)をのせ、染めない部分に防染のための〈糊〉を付け、生地を重ねて染める方法です。「注染」は、染料が布の下側に抜けて芯まで染まるため、生地の表裏が同じ色に染まり、裏表気にせずに使用できるのが魅力です。吸水性、吸湿性にもすぐれ、蒸し暑い日本の気候にぴったりの染物です。 武田染工場では、生地は2回精錬を施した晒を使用しており、「総理/文」「岡」「特岡」の3種をご用意しております。 ※〈型〉は、お客様のご要望の絵柄やデザインを弊社または鈴鹿にある型紙屋で作成させていただいております。 |
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〈型紙〉を生地の上に乗せ、染めたくない部分に〈糊〉を付けることにより、絵柄や文字を再現します。(糊付け箇所が白地になります)ヘラを使い、手作業で糊置きをする会社が多いなか、総柄などの細かい絵柄への対応を可能にするため、弊社では糊付けの機械を使用しています。
※手捺染やプリント手ぬぐいと異なり、技法上、注染では細かいラインは再現不可です。
染めたい部分のまわりに〈糊〉で土手をつくり、その内側に〈やかん〉とよばれる道具を使い、手作業で染料を染み込ませます。さらに生地を反転し、同様の方法で裏側も染め上げます。弊社は硫化染料、ナフトール染料、直染料、スレン染料等を使用し染色を再現しています。色によっては、ぼかし(グラデーション)なども可能です。
染めた後は、すぐに手作業で全体をほぐします。その後、〈糊〉を落とすため、2台の機械によって生地の洗浄を行います。洗浄した後は、ただちに脱水を行います。
洗いが終わったら、日光による天日干しを行います。梅雨の時期など天候が不順な時期は、お急ぎものに限り室内で乾燥させる場合もございます。
手作業により手ぬぐいの仕上がりサイズへと折り返します。その後、反物としてまとめ、ロール紙を間に挟み込んで、機械を使いロール加工仕上げを行い、生地のシワを伸ばして裁断します。
武田染工場では「硫化染め」という染め方を用いて帆前掛け(※)を染めています。「硫化染め」は、アミノフェノールなどの芳香族化合物を硫黄、または硫黄と硫化ナトリウムなどで加熱、溶解してつくられる化学染料を使用して染める方法で、伝統染色法である「藍染」と同様に、空気に触れることで酸化して発色する性質を利用したものです。 この方法は「藍染」の次に古い染色法で、昭和20~40年頃は主流でした。藍染ほど色落ちがせず、使うほどに程よく色が抜け独特の風合いを増す「硫化染め」は、現在では祭り袢纏や消防袢纏、帆前掛けや幟など、日本の粋や洒落を担う、一部の製品でしか見かけることができなくなった希少な染色法です。 ※帆前掛けは、室町時代の猟師が壊れた帆船の布を使って腰に巻いたことに由来する前掛けです。 |
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弊社の帆前掛けは、丸綿中巾という生地を使用します。糊置きする前に、帆前掛け10枚分がひと続きになった反物(生地)に、あらかじめついている糊や余分な汚れを落とすためと生地を柔らかくするために、一度煮て、脱水した後、乾燥させます。生地の白く抜きたい部分(絵柄や文字など)にヘラで防染のための〈糊置き〉をします。その後、定着のための砂をかけて乾燥させ、金属の伸子(しんし)を張り、縮まないようにします。
染めの前日から染料を調合して、当日は染窯の染料の温度を53度程度に保っておきます。〈糊置き〉と伸子掛けをした反物を、準備した窯に約1分程度浸けて染め上げます。染色は紺が基本で、茶色やバット染料の紺にも対応可能です。
染めた後はすぐ真水ですすぎ、空気に20分程度さらして酸化させ、色を発色・定着させます。その後、機械を使ってきれいに〈糊〉を落とします。もう1台の機械で、生成りの生地を白くするため希硫酸へ通して、さらに仕上げ洗いを行います。
洗いが終わったら、日光による天日干しを行います。梅雨の時期など天候が不順な時期は、お急ぎものに限り室内で乾燥させることもございます。
反物で染め上げた布を、帆前掛けの仕様に仕立て上げます。大きく分けて3種類、「長前掛け」「短前掛け両ポケット」「短前掛け片ポケット」がございます。その他、長前掛けのポケット付きやポケットのチャックの対応や、補強のための鋲打ちも、お客様のご希望により承ります。
※最近は帆前掛けの生地を使って、バッグや小物を加工されるお客様も増えています。